長浜市の60代女性が離婚を決断した理由(大人の性)
【滋賀心理カウンセリング】です。
滋賀県長浜市から来てくれた男性長浜さん64歳のお話です。
長浜さんには22歳で結婚した、かれこれ42年間も連れ添っている奥さんがいます。
3人の子供たちはそれぞれ結婚して、5人のお孫さんも元気に育っています。
一見して何の問題もない熟年夫婦です。
しかし。
カウンセリングの趣旨は「離婚を求められている。理由が理解できない」ということでした。
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長浜さんは先月、奥さんに「旅行に行きたい」と誘われて、
「そうか旅行か。久しぶりに行こうか」と優しく即答しました。
他の誰かを誘うでも誘わないでもなく、自然に今回は二人で行こうかという感じで揉めることなく行き先を決めて、
旅館を決めて、食べたい料理のプランで宿泊の予約も順調にできて、出発しました。
行きの道中で少し寄り道をして、美味しい食事をして、景色のいいところを歩いて、
機嫌よく宿に着きました。
露天の温泉に浸かり、プランの食事を楽しみ、一息ついて、
「あー、久しぶりに楽しいな」とご満悦に奥さんに話し掛けると、
奥さんも「うん、そうねぇ」と満足そう。
熱いお茶を飲みながらボーッとニュース番組を見て、
気が付けば夜の11時過ぎ。いつもは寝ている時間です。
眠くなってきたなぁと布団に転び、それに合わせてか奥さんも電気を消して布団に入り、
長浜さんが「どうや?楽しかったか?」と聞くと
奥さんは「うん」と嬉しそうに答えました。
「そうかそうか」と長浜さんはウトウトして、気が付いたら寝ていました。
長浜さんにとって平和で幸せな1日でした。
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そして翌朝。
長浜さんが目を覚ますと、もう奥さんは起きていてテレビも点いていました。
あっさりして食べやすい朝食をいただき、せっかくの機会だしと温泉に浸かり、宿を出ました。
帰り道中に何となく奥さんの口数が少ないとは思ったものの、わざわざ言いもせず帰宅しました。
その夕方、普段は愛想の良い奥さんが表情なく話し掛けてきました。
「これ・・・書いてくれる?」
見ると離婚届です。
「えっ?はっ・・・?」
長浜さんは、なんで?とすら思わず、思考が停止してしまいました。
10秒ほどしてから我を取り戻し、考えました。
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なんで離婚されるようなことがある?
一生懸命に仕事を頑張ってきて、収入は人様と同じようにあって困らせたことはないハズ。
できるだけ家事も育児も協力してきて、休ませたり、理解もしてきたつもり。
浮気もしてない。借金もない。賭け事もしない。何かにすごく我慢してたのか?わからない。
もしかして理由はこっちじゃなくそっち?浮気か?62にもなって?(奥さんは2つ年下)
いや、まさか。そんなことはないない。そんな時間はなかったと思うし、浮気ができるタイプでもない。
さっぱりわからん。理由なく「第二の人生」とか言い出すんか?
昨日あんなに楽しそうにしてたのに。
一体なにがどうなってる?
– – – – –
いろんなことを考えたけど、わかりません。
たしかに長浜さんは、誰が見ても良い人、良い旦那さんです。
もちろん奥さんも良い人です。何の問題もない二人です。
長浜さんは直接、聞きました。
「な、なんで?」
すると奥さんは黙って、座って、静かに泣き出して、少ししてからボソッと
「理由は、わからへんならいい。わかってないならそれが答えやん。私は寂しかった」と言いました。
長浜さんは、さっぱり訳がわからず
(え、いや、いま一緒におるがな。昨日も二人で温泉に旅行してきたがな)と
奥さんが寂しいと言う理由がわかりません。
もちろん、そんな突然の離婚の申し出は受けるに受けれず
「ちょっと待って。もうちょっと話しようや」と焦って、いったん逃げて、
ウチへカウンセリングに来てくれました。
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話を聞いた私も奥さんの真意がわからず、
長浜さんは悪い人には見えないし、嘘もなさそう。
じゃあ長浜さんが気付いてない何かがあるんだろうけど、それを奥さんはハッキリ言わない。
んん?どういうこっちゃ?と二人で困惑して、提案したのが
「奥さん、ウチに来てもらえません?聞いてみますから」でした。
「おぉ、先生が聞いてやってくれる?」と長浜さんも言ってくれて
後日、奥さんに来てもらいました。
–
奥さんは「確かに、理由も言わんと離婚は承服できんわね」と理解してくれて、最後に話そうと思ってくれたそうです。
私が「え、最後?」と聞くと
「だって、催促して、してもらうようなことじゃないから」と言い終わるかどうかのうちに奥さんは泣き出しました。
これはよっぽどちゃんとした理由があるな、と感じましたが、まだ私にはわかりません。
「理由、話しやすいようにでいいので教えてくれます?」と言うと
「旦那は、何にも問題なく良い人で、何の問題もないんです」と言われて、
「じゃあ、なんで?」と聞くと
「私が寂しがっただけで、不満がある訳じゃなくて・・・」と言われ、
まだ要領を得ない感じがして少し突っ込んだ聞き方をしてしまいました。
「うーんと。旦那さんに落ち度も問題もないけど、でも寂しかった?不満はないけど満足できてなかった?」と聞くと
「そうやけど、そうじゃなくて」と、また曖昧な返事。
んー?何のこっちゃ?と私が少し困っていると、奥さんが少しずつ話してくれました。
「あのね、6年ぶりにね、旅行に行ったんです」
はい。先日の温泉ですね。
「そこで、恥ずかしい話やけど、私、最後の期待をしてたというか・・・」
ふむ。最後の期待。
「でも、すぐに寝てしもうて・・・」
ふむ・・・
「だからもう私アカンわと思って・・・」
ふむ・・・
・
・
・
ふむ?
え?ちょっと待って?
「ん?それは、その、スキンシップというか、コミュニケーションというか?」
「はい・・・」
「えーっと、それは、すいません、ちゃんと理解するのがいいと思うんでズバリ聞きますね?どれぐらいの・・・?」
「それは、まぁ、できるだけでいいんですけど。別に最後までじゃないにしても・・・」
「あぁ!えーっと。それはスキンシップとかコミュニケーションとかいうレベルじゃなくて?」
「いや、まぁ、できれば。いや、そうやね。恥ずかしいけど、恥ずかしがってる私もいかんのよね・・・」
「そっか。ハッキリ言うと、イチャイチャしたかったと」
「うん、もう言いますわ。そうです」
「ふんふん。でも、せっかく温泉旅館に泊まりに行ってまでムードも作れただろうに、何もなくアッサリ寝てしまった旦那さんにガッカリしたと?」
「ガッカリというか、まぁ、もう、女として完全に求められてないんやな、って」
「そういうことですか。それは・・・そうか。夫婦やもんね。まったくないのが当たり前になるのは寂しいですよね」
「でも、まぁ、もう20年ぐらい何もないから、よう言わんし、いい年してって思われるのも当たり前やろうし・・・」
「いやいや、すいません。そんなことはないんですけど。でも、気が付きませんでした。確かに、20代30代なら一番に浮かぶ理由やのに、そうですね」
「その、そんな極端じゃなくてもいいんですよ。たまには、頭をポンポンしてくれるとか、ちょっと手を握ってくれるとか、もちろん言い出したらキリないけど、でもやっぱり60過ぎても女は女やからっていう部分はあるから・・・」
「いや、そりゃそうですね。すいません。たぶん旦那さんも気が付いてないけど、男って無神経なモンで。そっか、その、性的なこともそうやけど、特別な関係って思える繋がりみたいな?」
「そうそう、その程度でよかったんですよ。毎日イチャイチャとか、そんなんじゃなくて。でも、家のことして、子供の世話して、当たり前に流れ作業の毎日で、旦那は優しいけど、私は特別な感じはなくって、ただの子供のお母さんなだけになっていって・・・」
「そうかぁ。不満はないけど満足できないって、なるほどですねぇ。何歳になっても仲良くしてたいし、ちゃんと特別な繋がりがあるって思えるままがいいもんね。そりゃそうだ」
「優しいというか、常識的で、真面目で、ちゃんとした旦那なんですけどね。その、性的なことだけは私に一切なにも求めてこないのが寂しいと思うようになってしまって、1回そう思ったら毎日ずっとすごく寂しく思ってしまって、それが限界に来てて。」
「それで、最後に温泉旅行で機会を作ったというか、最後の期待をしたと。そっかぁ・・・」
「もう、いいですけどね。こうやって、こんな恥ずかしい話やけど先生に知ってもらって、もうスッキリ成仏できたわ(笑)」
「成仏って・・・。旦那さんにも知らせなダメですよ」
「でも、催促して、してもらうもんじゃないし・・・」
「最初は催促でもいいじゃないですか。そのうち気が付いたら自然になれてたらいいでしょう。久しぶりに思い出すことなんやから慣れるまでは不自然かもしれへんけど。誰が見ても仲良しやのに、何も言わんと別れて終わりってそれこそ寂しいでしょう」
「そうかなぁ」
「そうですよ!他の人には言わんでいいけど、せめて旦那さんには言うべきですよ。絶対に謝ってくれるから。ちゃんと大事にしてくれるから。私から伝えてもいいですし」
「ほな・・・先生にお任せします」
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数日後、長浜さんに来てもらって伝えました。
「・・・と、いうことでした」
「は、はぁ!?いや、もうババァやがな!」
「言い方!そんな言い方ダメですよ。私が話した時は62歳の女の子でしたよ」
「いや、ワシもジジィやし・・・。えぇ?そうなん?へぇ~・・・。まぁ、そういえば、そうか。いや、でも、そう言われても・・・」
「うん、ビックリしますよね。ちゃんと奥さんに言ってあります。わかってて興味ないんじゃなくて、わかってないだけと思うって」
「それもそうなんやけど、先生こっちにも事情があるがな」
「長浜さんの方にも事情?」
「ワシもワシで使いもんにならんがなコレ」
「あ、あ~。えーっと、そっか。そうなんですか・・・。いや、でも、たぶん奥さんの気持ちとしては、最後までできなくても、気持ちがあればというか、こういうことに関してもわかり合ってれば、ということじゃないかなぁと思いますけど」
「あぁ、そうなん?でもワシも自信ないがな」
「うん。たぶんね、自信ないってことを奥さんに伝えたら同じように『そうなん?』って言ってくれますよ。それがアカンのじゃなくて、それならそれで、って感じでいいと思います」
「うーん。でも、まさかそんなことやったとは思わんかったな~。特別も何も、他に誰がおる言うんや、それこそこんな年になって。なぁ」
「はい。私は男なのでよくわります。けど、まぁ、やっぱり男には想像つかへんぐらい『女はいくつになっても女』ってことなんやろね」
「ほぉ~。へぇ~。わからんもんやなぁ」
「ホンマにねぇ。でもね、奥さんに『自信ないんや』って伝えたらたぶん笑ってくれますよ。どっちも自信満々な訳ないんやから。それでえぇんやから」
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ということで、まさかの理由でしたが意外なことに離婚は回避できました。
なんやかんやで両想いな感じはしてたし、もうしっかり夫婦だし、42年目だし。
なんのことはない。奥さんはちゃんと長浜さん一筋でした。もちろんお互いに。
最後には60代ご夫婦のノロケみたいになってました(笑)
それにしても、男と女でこうまで思ってることが違うとは。
しかし、今の御年になって頑張って甘えれた奥さんがかわいい。
ぜひ最後の時まで連れ添ってほしいと応援したくなります。
【滋賀心理カウンセリング】でした。